母の形見
先日ちょっと探し物をしていて。
パタパタと古いタンスをあちこち開けてみていたの。
まだ片付けていない、母の物がどっさり入ったタンスの
中をあれこれ探していたら、ある引き出しの中からね、
母のデザイナー時代のデッサンノートが沢山出てきた。
亡き母は服飾のデザイナーで、独身の時はきっと最高に
輝いていたのだと思う。
パラパラと日記帳を読んでいたら、母がどんな思いで
日々過ごしてかがとてもわかる。
きっとイキイキとオールドミスをしていたに違いない。
写真の母は、バリバリ仕事をしてたであろう時期。
そして、大学生の父と、大恋愛をしていた時期の写真。
父と出会い、年下の大学生と恋に落ちてそのまま結婚。
そして、結婚後に独立。その後私が産まれる。
その頃のデッサンや日記も沢山出てきた。
探し物そっちのけで、私は床にぺたんと座り込んで
何時間も母のデッサンを見ていた。
時折、そこには母の思いが書き込まれていた。
【 由美 8ヶ月。おくるみ 】
優しい字で書かれたメモ。
私は小さい頃から、そんな母の手作りの服ばかりを着て
いた。過去記事で少し書いた事があるのだけれどね、
私はそれが嫌で嫌で(笑)考えてみればとても贅沢な話
なんだけど、当時はそれがどうしても嫌で。
皆んなと同じものが欲しかったからね。
でもね、デッサンに書かれた母の思いを先日見たとき、
あぁ母は私を愛してくれてたのねって心から分かった。
どうして、いつも後になってからわかるんだろうって。
【 由美 1歳3ヶ月 よちよち歩きが愛おしい。】
【 この子は向日葵のような子。胸のアップリケは
向日葵にしよう。】
まだまだある。時折涙で滲んでしまったのだけどね。
一枚一枚そのデッサン帳を見ながら。
母の思いも感じながら。ゆっくり見てたの。
母の遺してくれた、このノート。
これぞ【 母の形見 】だわって。
高価な物ではないけれど、本来ね、こんなものが一番の
形見なんだわって思いながら。
宝石屋をしていてこんなん言うのもなんだけど(笑)
ずっと読んでたら、私が物心ついた時期の日記は悲惨だった(笑)
【今日も帰って来ない。あの子は何を考えてるんだ。】
【 何を話しても、どれだけ話しても。由美とは分かり
合えない事が今わかった。】
【 どうして由美はしんどい選択ばかりするんだろう。
若い時の苦労は買ってでもしろと言うが、しないでいい
苦労だってたくさんある。由美はどうしてしなくていい
苦労を率先してするんだろう。】
どれくらいの時間、そこに座り込んで読んでただろう。
母のその当時の気持ちもね、本当によく分かった。
私の洋服のデッサンや、型紙も全てそこにあった。
産まれた時からの、何十年もの歴史。
何十年もの、母の言葉。