yumi-fields

日々感じること。心のままに。 私の病気の事、仕事やプライベート、心の中の事をありのままに。

DV ⑵



『 どうして気づかなかったんだろう。』


キッチンで立ったまま。
彼女を抱きしめながら、ずっと話を聞いていた。
奥の部屋には子供達が何も知らずに眠っていた。
ごめんね、辛かったねって。私も一緒に泣いた。



『 Rちゃん。すぐに家を出よう。』


あの時私のした事が、正しかったのかはわからない。
ただ、とにかく逃す事。それしか考えれなかった。



遠方にご主人が出張に出ている三日間。
今日準備して、明日中。なんとかなる。

『 いい?私も詳しくわからないからすぐに調べる。
あなたは家を出る準備をして。』

私はこういう時程、冷静になる。
淡々とすべき事を事務的に話す。



明日の朝、子供達が帰ったら、警察に行って。
そして、保護してもらって。
それからは連絡が一切取れないと思う。
だから、今必要な事を話しておこう。



今晩中に、必要な荷物をまとめて。
明日の夜、その荷物を取りに私が来るからね。
あなた達は必要最低限の物だけ持って、警察に行って。
私が後日、落ち着き場所が決まったら必ず送るから。



頭をフル回転して、そんな話をしていた時。
彼女が言った言葉。耳を疑った。


「 由美ちゃん、ちょっと待って。きっと私も悪い所があるから怒られるんよね。あの人だけ悪いんじゃない。それに来月、子供達の卒業式があるから、逃げるんならその後の方が良くないかな?」


私もうびっくりして思わず叫ぶ。
この子頭がおかしくなったんじゃないかなって。

『 Rちゃん。何言ってるの?あなた今までそれで何年我慢してきたん?どうしてあなたが悪いの?自分の言ってる事分かってる?』


『 料理が不味いとか、掃除が下手だとか、そんな事で人を殴っていい理由には、絶対にならないんだよ!何言ってるの!!!』



蹴ったり殴ったりした後、ちゃんとあの人謝るって。
そしたら私も悪かったんだなって思うって。
仲直りしよって、身体を求められたら、断れない。
いつもあの人、殴った後は私を愛してくれるって。



違う違う違う!!! それは愛情じゃない!



もうね。ただただ悲しかった。
彼女は、思考回路がおかしくなっていた。
聞いてる私の方が、おかしいんじゃないかと思う位に。



現金ある? 通帳と印鑑はすぐ出る??
冷静に必要な事を考えた。
私も腹を括った。



そっとドアを開けると、子供達がなにも知らず眠っていた。
うわぁっと、涙がこみ上げた。
どうしてもっと早く、気がつかなかったのだろう。
サインがいっぱいあったはずなのに。



夜中の2時を回っていた。
もう、私とは会えないからね。
大丈夫。必ず上手く行くから。
さっき約束した事、必ず守って。
後の事は私が全部するから。心配しなくていい。
そう言って、もう一度彼女を抱きしめ、私は家を出た。