yumi-fields

日々感じること。心のままに。 私の病気の事、仕事やプライベート、心の中の事をありのままに。

DV ⑶



『 私に、居場所も何も言ってはダメ。
もう連絡しなくていいからね。
落ち着いたら、必ず荷物は届けるから。安心して。』


午前中、仕事をしながら気が気じゃなかった。
無事に警察に行っただろうか。保護されただろうか。
何度も時計を見ながら、無事を祈った。



仕事が終わって、彼女の家に着いた時、唖然とした。
何だこの荷物の量は…。ガレージいっぱいの荷物。
私、普通車やしね…。まぁいい。何とかなるか。
夜中に無心で準備した彼女を思って、一人で黙々と車に荷物を載せた。



隣近所に分からないよう車を止めそっと音を立てずに。
夜逃げするような気分だった。
車の隙間という隙間に詰め込み、最後は私の膝にまでビニール袋を載せた。
職務質問されてたら、一発アウトの状況ね(笑)



車から実家に電話を入れる。もう22時を回ってた。
『 ママ、私だけど。大変申し訳ないんだけど、ちょっ
と預かって欲しい荷物があって。今から行くから。
一部屋空けといてくれる? 』




*******𓆝𓆟𓆜𓆞𓆡*******



父と母は、私に何も聞かなかった。
二、三日経って、荷物を整理しに行った時少し話した。
彼女とはまだ連絡は取れなかったけど、すぐに配送出
来るように、荷造りをした。



子供の物が大半だった。着替え。学校のもの。表彰状。
新品のランドセル。下の子は春から小学生だった。
どんな思いでこのランドセルを段ボールにつめたのか。
それを思うと涙が止まらなかった。



父も母も無言で手伝ってくれた。
こんなくちゃくちゃになって。すぐに着れないやんて。
アイロンをひとつずつ当てて、綺麗に畳んでくれた。
こんな鍋?いるん?ってか、この花瓶どうするよ(笑)



あれもこれもって。もっと必要な物があったろうに。
母も涙を浮かべながら、一緒に荷造りしてくれた。

「 由美はどうして、こうもややこしい事に首を突っ込
むんだろうね。でもママは、あんたを誇りに思う。」

母がポツリとそう言ってくれた。

『 世の中の同じ状況の人、探してまで助ける事は
出来ない。けどせめて、私の友達がそんな目に合えば
私はほっとけない。ごめんなさい。』



怖い思いもした。
三日間の出張のはずだったのに、虫の知らせなのかな。
一日早く帰ってきたご主人から電話があった時はヒヤリとした。



うちのん知らんか?
由美ちゃんの車が停まってたの見てた人がいるねん。
それで電話したんや。うちのん匿ってるとか違うよね?
私はもちろん全く知らないと言い切った。
あちこち電話して探し回ってる様子が想像出来た。



何度も電話があり、背筋がゾッとした事。
電話の内容で、うちに来て中を覗いてただろう事や
どこからか、うちの家族の出入りを観察していた事が分かった。
その時始めて、私は自分の行動を深く反省した。



『 由美。あんたはひとりじゃない。家族がいる。
それをもっと自覚しなさいね。あんたは良い。
何が起こっても自己責任やから。
でも子供に何かあったらどうするの?』



本当にそうだった。
私はバカだ。そんな事ひとつも考えなかった。
逆上した人間は何をするか分からない。
その時、私もたくさん学んだ。



後日、彼女から連絡が来た時は本当にホッとした。
シェルターに入り、保護された経緯はその時に聞いた。
荷物はものすごい量だった。
そこには母がそっと入れてくれたお米もあった。



*******𓆝𓆟𓆜𓆞********



私のする事は破茶滅茶だ。いつもそう。ごめんなさい。
周りを巻きこんでしまう。
その時無我夢中で良かれとした事が、全て善とは限らない。


私もこの時、たくさんの事を経験し、たくさん学んだ。



『 由美ちゃん。私の背中を押してくれてありがとう。
命を救ってくれてありがとう。新しい生活幸せです。』
後日。彼女から長い長い手紙が届いた。
良かった。泣きながら、何度も何度も読み返した。



たくさんいるんよ。世の中にたくさん。
私の知ってるだけでも、何人もよ。
びっくりするような人が、暴力夫だったりするのよ。
何とか。何とか気づいてほしい。
シェルターに逃げて。助けてって声に出してみて。



世の中に、殴っていい理由なんてひとつもない。
それがどんな理由であっても。

手は殴る為でなく。
愛する人を抱きしめる為にあるのです。

その手は、愛する人を優しく包む為にあるのです。



生きててほしい。

私はあなたに、生きてほしいのです。

だからお願い。もう我慢せずに、声に出してほしい。